紀伊海岸南下計画「 加太④ 淡嶋神社と西方浄土 」



海のにおいは 女性のにおい
そのまま 母胎のにおいのような気がする

全国から集まったひな人形が 白木の船に乗り
西の沖へ旅立ってゆく ここ淡嶋神社のひな流し
ごはん屋のおばちゃんによると
近年まで そのまま海へ還っていった三隻のこの船も
今では ゴミになるからと回収されているという

南端 串本より北 この半島では
きれいに 海の向こう側に
陽が沈む

自分には そこに仏教の西方浄土が重なり
この まだ観ぬ 三月三日のひな流しに
つたえ聞く 那智の補陀落渡海(ふだらくとかい)
( 観音の浄土である補陀落 に生まれるため
 生きながら その沖にて入水する )

また 浄土真宗の往相回向・還相回向
(おうそうえこう・げんそうえこう)
( 浄土に迎えられ仏となり ふたたびまた
 この世に還り 衆生に無限の光をとどける )
のイメージが 重なる


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北は大阪 南は和歌山市
都市と街に挟まれているのに この加太という町の
不思議な果て感 はなんだろう
その果ては 海のむこう
光の世界につながっている

神社参道の食堂で
魚貝の定食をいただいた
鯛の切り身は 醤油でなく
硫黄のような香り ただよう
この紫色の岩塩を削り かけるよう
大きな体の 女性に教えられた


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戦前の淡嶋神社 現在は鉄筋(昭和40年代頃 今の造りに)


手元の本には 古代
ここ 紀州から国への貢ぎ物は 塩であり
周辺から製塩の遺跡が 多くみつかっていると
また サザエやアワビは
ここ加太の海女が採ったものに 限っていたとある

海のにおい 潮のにおい
祠の中にみた 無数の性器をかたどった
子宝・安産祈願 婦人病よけの奉納物にも
命終え また生まれてくる 生命の循環を見
真宗の往相回向・還相回向を 重ね
その沖の光とともに この加太で僕は
浄土 という母胎の中にいた
人は皆 海の中にいるような気がする

和歌山市加太